信長の城：安土城

安土城

天正四年正月,織田信長は,それまでの居城,岐阜城を嫡子織田信忠に譲り,近江国蒲生郡に新たな本拠地として安土城を築いた.
もともと目加田といっていたが, 信長が安土と改名した.

普請奉行(築城の総指揮者)は丹羽長秀である.安土の麓の馬廻衆の縄張りは信長自ら行った.
信長は着工一ヶ月後にはもう移り住み,四月には城内の石垣を築くために,観音寺山などから石を運ばせ,畿内の諸侍,京,奈良,堺の職人を召している.

天正七年五月十一日｢天主｣が完成し,以後信長の居城となる.

標高一九九.二m 比高一〇五mの平山城で, 日本で最初の総石垣作りの城で,空堀,堀切を無くした城である.(厳密に言うと本当の最初は観音寺城)
(西ヶ谷恭弘氏の説によると,空堀をなくすことにより,石垣を急にして城内の面積を広くできるからだそうである.)

天主は屋根五層の廻縁望楼型で,内部は地上六階,地下一階の七階建てである.
五階は正八角形で,屋根には金鯱がのっていた. 内部には一階から四階までの吹き抜けがあり,五階,六階はそれぞれ仏教界,儒教界とﾃｰﾏごとの壁画が描かれている.

ちなみに,信長以前は天守には城主は普段は住んでおらず麓の居館に住んでおり,籠城戦になるとそこに籠もっていたのであるが,信長は天守に住み,そこから全てを取り仕切った

『信長公記』の安土城の描写
　　　　　安土の御普請首尾仕るの事

　安土山御天主の次第　石くらの高さ十二間余りなり。石くらの内を一重土蔵に御用い、是れより七重なり。　二重石くらの上、広さ北川へ廿間、西東へ十七間、高さ十六間。ま中に有る柱数二百四本立つ。本柱長さハ間、ふとさ一尺五寸、六寸四方一尺三寸、四方本。御座敷の内、悉く布を着、黒漆なり。西十二畳敷、墨絵に梅の御絵を､狩野永徳に仰せつけられ、かゝせられ候。何れも、下より上まで、御座敷の内、御絵所､悉く金なり。同間の内に御書院あり。是れには遠寺晩鐘の景気かゝせられ侯。其の前に、ぼんさんヲをかせられ、次の四でう敷、御棚に鳩の御絵をかゝせられ候。叉、十二畳敷、鵝をかゝせられ、即ち、鵝の間と申すなり。叉、其の次、八畳敷、奥四でう敷に雉の子を愛する所あり。南に又、十二畳布、唐の儒者達をかゝせられ、叉、八でう敷あり。東は十二畳敷、次に三でう布、其の次に八でう敷、御膳拵へ中す所なり。叉、其の次に八畳敷、是れ又、御膳拵へ申す所なり。六でう敷、御雨戸、又、六号泣、何れも印絵所金なり。北の方に御土瓶あり。其の次、御座敷、廿六でう敷の御南戸なり。西は六でう敷、次、十でう敷、叉、其の次十でう敷、同十二畳敷、御南戸の数七つあり。此の下に、金灯盧置かせられたり。三重め、十二畳敷、花鳥の御絵あり。即ち、花鳥の間と申すなり。別に一段、四でう敷御座の問あり。同花鳥の御絵あり。次、南八畳敷、賢人の問に、ひようたんより駒の出でたる所あり。東は麝香の間、ハ畳敷、十二でう敷、御門の上。次、ハでう敷、呂洞賓と申す仙人、並びに、ふえつの図あり。北廿畳敷、駒の牧の御絵あり。次に十二でう敷、西王母の御絵あり。西、御絵はなし。御縁二段、広縁なり。廿四でう敷の御物置の御南戸あり。口にハでう敷の御座敷これあり。柱数百十六本立つるなり。四重め、四十二回に、岩に色々木を遊ばされ、即ち、岩の問と申すなり。次、西八畳敷に龍虎の戦ひあり。南十二問、竹邑くかゝせられ、竹の問と申す。次に、十二問に松ばかりを色く遊ばされ、即ち、松の問と中す。東はハ畳敷、桐に鳳凰かゝせらる。次、ハ畳敷、きよゆう耳をあらへば、そうほ牛を牽いて帰る所、両人の出でたる故郷の体。次に、御小座布七畳敷、でいばかりにて、御絵はなし。北は十二畳敷、是れに御絵はなし。次に十二でう敷、此の内、西二間の所に、てまりの木遊ばさる。次にハ畳敷、庭子の景気、則も、御鷹の問と申すなり。柱数九十三本立つ。五重め、御絵はなし。南北の破風口に四畳半の御座敷、両方にあり。こ屋の段と申すなり。六重めハ角四間あり。外柱は朱なり。内柱は皆金なり。釈門十大弟子等、尺尊成道御説法の次第、御縁輪には餓鬼ども、鬼どもかゝせられ、御縁輪のはた板には、しゃちほこ、ひれうをかゝせられ、高欄ぎほうし、ほり物あり。上七重め、三間四方、御座敷の内、皆金なり。そとがは、是れ又、金なり。四方の内柱には、上龍、下龍。天井には天入御影向の所。御座敷の内には、三皇、五帝、孔門十哲、商山四晧、七賢などをかゝせられ、ひうち、ほうちゃく、数十二つらせられ、狭間戸鉄なり。数六十余あり、皆、黒漆なり。御座敷の内外柱、惣ゝ、漆にて、布を着せさせられ、其の上、皆黒漆なり。上一重のかなぐは、後藤平四郎仕り侯。京・田舎衆、手を尽し申すなり。二重めより、京のだい阿弥かなぐなり。

安土城の中に,三重塔を持つ摠見寺は本尊が信長である.
ﾌﾛｲｽの日本史によると｢信長自らが神体である.生きた神仏である. 世界には他の主はなく,彼の上には万物の創造主もない,といい,地上において崇拝されんことを望んだ｣.
この摠見寺には諸国から人々がたくさん集まり礼拝したという. 現在では安土山全てを寺領として確保してくれている.

また,家臣に単身赴任を許さず,ある火事をきっかけに,岐阜の家々を焼き払ってまで,家族共々安土に引っ越しさせたという.

これほど栄えた安土城であるが,本能寺の変と前後して,灰燼と化す.
これには,六月十四日,明智秀満が退城の時に火をかけたとも,翌十五日に入城した信雄が,明智軍残党狩りにはなった火が燃え広がったとも言われる.
しかし,『ｲｴｽﾞｽ会日本年報』によると,
｢付近にいた信長の一子(次男信雄)が,いかなる理由によるか明らかでなく,智力の足らざるためであろうか.城の最高の主要な室に火をつけさせ,ついでに市にも,火をつけることを命じた｣とある.
それとは対照的に, 蒲生賢秀(蒲生氏郷の父)は本能寺の時安土城留守居役であったが, 退却するに際し,
｢信長公,年頃,御心を尽くされ,金銀をちりばめ,天下無双の御屋形作り,蒲生覚悟として焼き払ひ,空しく赤土となすべき事,冥加無き次第なり.｣(信長公記)といい,焼かずに退却している.
なお,信雄は,清洲会議で秀吉側に付いているが,担がれたと知って織田家の血統を主張し,家康と秀吉の間を行き来し,ついには尾張の地を離れることをいやがり,所領没収となる.
(結局御伽衆には残るのであるが).
火をかけたのかどうかはわからないが,当時から,智力が足らないと言われているのはおもしろい.

駅からはﾚﾝﾀｻｲｸﾙがある.が,自転車の乗れない僕にも,坂本に比べると歩いても楽だった.
駅の裏側には安土町城郭資料館.安土山の隣は観音寺山.線路を挟んで,安土城と対称の位置に,安土城考古学博物館,信長の館がある.
下の安土城5F,6Fは信長の館にある復元である.

童友社の安土城のﾌﾟﾗﾓﾃﾞﾙ

安土城5F 安土城5F,6F

摠見寺門摠見寺三重塔

左上大手道
入り口から

右上大手道左
羽柴秀吉邸下段郭

左下大手道
ここから大手道が曲がりくねる

右下
大手門と百々橋口道が分かれる

左上武井夕庵邸

右上織田信忠邸

左下織田信澄,森蘭丸邸
ここから大手道が曲がりくねる

右下黒鉄門跡
虎口前半

左上黒鉄門跡
虎口後半

右上信長廊
秀吉が信長を讃えて建てたと言うが･･･

左下蛇石か?
蛇石は山上に運び上げるのにかなり苦労し,
引き綱が切れて百五十人以上の人夫が潰されたという巨石.
これは蛇石ではないと思うが妙な所にある石である.

右下本丸へ
左が本丸石垣

左上本丸台へ上がる階段
本丸は石垣台の上に建ち,石垣内がB1Fとなっていた.

右上本丸より昔琵琶湖だった方を見る
昔は琵琶湖が安土山の麓まできていて
すぐに船で出られたという

左下三の丸へ
発掘調査のためか進入禁止

右下

『信長公記』の安土城の描写
安土の御普請首尾仕るの事　安土山御天主の次第　石くらの高さ十二間余りなり。石くらの内を一重土蔵に御用い、是れより七重なり。　二重石くらの上、広さ北川へ廿間、西東へ十七間、高さ十六間。ま中に有る柱数二百四本立つ。本柱長さハ間、ふとさ一尺五寸、六寸四方一尺三寸、四方本。御座敷の内、悉く布を着、黒漆なり。西十二畳敷、墨絵に梅の御絵を､狩野永徳に仰せつけられ、かゝせられ候。何れも、下より上まで、御座敷の内、御絵所､悉く金なり。同間の内に御書院あり。是れには遠寺晩鐘の景気かゝせられ侯。其の前に、ぼんさんヲをかせられ、次の四でう敷、御棚に鳩の御絵をかゝせられ候。叉、十二畳敷、鵝をかゝせられ、即ち、鵝の間と申すなり。叉、其の次、八畳敷、奥四でう敷に雉の子を愛する所あり。南に又、十二畳布、唐の儒者達をかゝせられ、叉、八でう敷あり。東は十二畳敷、次に三でう布、其の次に八でう敷、御膳拵へ中す所なり。叉、其の次に八畳敷、是れ又、御膳拵へ申す所なり。六でう敷、御雨戸、又、六号泣、何れも印絵所金なり。北の方に御土瓶あり。其の次、御座敷、廿六でう敷の御南戸なり。西は六でう敷、次、十でう敷、叉、其の次十でう敷、同十二畳敷、御南戸の数七つあり。此の下に、金灯盧置かせられたり。三重め、十二畳敷、花鳥の御絵あり。即ち、花鳥の間と申すなり。別に一段、四でう敷御座の問あり。同花鳥の御絵あり。次、南八畳敷、賢人の問に、ひようたんより駒の出でたる所あり。東は麝香の間、ハ畳敷、十二でう敷、御門の上。次、ハでう敷、呂洞賓と申す仙人、並びに、ふえつの図あり。北廿畳敷、駒の牧の御絵あり。次に十二でう敷、西王母の御絵あり。西、御絵はなし。御縁二段、広縁なり。廿四でう敷の御物置の御南戸あり。口にハでう敷の御座敷これあり。柱数百十六本立つるなり。四重め、四十二回に、岩に色々木を遊ばされ、即ち、岩の問と申すなり。次、西八畳敷に龍虎の戦ひあり。南十二問、竹邑くかゝせられ、竹の問と申す。次に、十二問に松ばかりを色く遊ばされ、即ち、松の問と中す。東はハ畳敷、桐に鳳凰かゝせらる。次、ハ畳敷、きよゆう耳をあらへば、そうほ牛を牽いて帰る所、両人の出でたる故郷の体。次に、御小座布七畳敷、でいばかりにて、御絵はなし。北は十二畳敷、是れに御絵はなし。次に十二でう敷、此の内、西二間の所に、てまりの木遊ばさる。次にハ畳敷、庭子の景気、則も、御鷹の問と申すなり。柱数九十三本立つ。五重め、御絵はなし。南北の破風口に四畳半の御座敷、両方にあり。こ屋の段と申すなり。六重めハ角四間あり。外柱は朱なり。内柱は皆金なり。釈門十大弟子等、尺尊成道御説法の次第、御縁輪には餓鬼ども、鬼どもかゝせられ、御縁輪のはた板には、しゃちほこ、ひれうをかゝせられ、高欄ぎほうし、ほり物あり。上七重め、三間四方、御座敷の内、皆金なり。そとがは、是れ又、金なり。四方の内柱には、上龍、下龍。天井には天入御影向の所。御座敷の内には、三皇、五帝、孔門十哲、商山四晧、七賢などをかゝせられ、ひうち、ほうちゃく、数十二つらせられ、狭間戸鉄なり。数六十余あり、皆、黒漆なり。御座敷の内外柱、惣ゝ、漆にて、布を着せさせられ、其の上、皆黒漆なり。上一重のかなぐは、後藤平四郎仕り侯。京・田舎衆、手を尽し申すなり。二重めより、京のだい阿弥かなぐなり。

標高	199.2m
比高	105m
場所	滋賀県蒲生郡安土町下豊浦 mapionで見る google地図で見る
最寄り駅	JR琵琶湖線安土駅

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	左上大手道入り口から
	右上大手道左羽柴秀吉邸下段郭
	左下大手道ここから大手道が曲がりくねる
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	左上武井夕庵邸
	右上織田信忠邸
	左下織田信澄,森蘭丸邸ここから大手道が曲がりくねる
	右下黒鉄門跡虎口前半

	左上黒鉄門跡虎口後半
	右上信長廊秀吉が信長を讃えて建てたと言うが･･･
	左下蛇石か? 蛇石は山上に運び上げるのにかなり苦労し, 引き綱が切れて百五十人以上の人夫が潰されたという巨石. これは蛇石ではないと思うが妙な所にある石である.
	右下本丸へ左が本丸石垣

	左上本丸台へ上がる階段本丸は石垣台の上に建ち,石垣内がB1Fとなっていた.
	右上本丸より昔琵琶湖だった方を見る昔は琵琶湖が安土山の麓まできていてすぐに船で出られたという
	左下三の丸へ発掘調査のためか進入禁止
	右下

	安土城5F		安土城5F,6F
	摠見寺門		摠見寺三重塔